原子番号27。元素記号"Co "。鉄に近い硬度、強度をもつコバルトは、強い磁性をそなえた鉄族元素のひとつである。などというと、日常生活には縁のないものに思えるかもしれないが、このコバルトは健康のために欠かせない存在。人間が生きていくために必要不可欠な必須ミネラルのひとつである。
　 カルシウム、マグネシウム、カリウムなどのミネラルとは違い、コバルトはビタミンＢ12を構成する成分のひとつとして存在している。骨髄の造血作用や赤血球の形成に不可欠なビタミンＢ12が不足すると貧血、食欲低下などの悪影響があらわれるといわれている。ビタミンＢ12の含有量が多い食品は牡蠣、牛乳、レバー、卵など。コバルトは、ふだん、何気なく口にしている身近な食べものの中にも、じつは存在しているのである。

　天然のコバルトの質量数はすべて59。つまり、自然界には、陽子と中性子を合計59個もつ「コバルト59」しか存在していない。これに対し、「コバルト60」と呼ばれる質量数60のコバルトは、天然の「コバルト59」に原子炉内で中性子を照射・吸収させることによって人工的につくられる。
　 コバルト59の主な用途は、顔料や磁石、合金の原料。手でふれてもそれ自体は無害な物質である。一方、その人工放射性同位体である「コバルト60」は、強力なγ線源であり、そのパワーが悪性腫瘍の治療や医療用具の滅菌、非破壊検査などに幅広く活用されている。また、世界保健機構（WHO）は、規制値を定めて農産物の発芽防止や畜産水産物の殺菌などに放射線照射を推進。最近は日本でも、ジャガイモの発芽防止などにコバルト60が用いられている。