顔料からハイテク機器まで、さまざまな分野で活用されているコバルト。この貴重な鉱物の最大の産出国は、世界の総生産量の約30%を占めるコンゴ民主共和国(旧ザイール)である。コンゴには世界のコバルト埋蔵量の約44%が眠っているといわれているが、2003年の暫定政権成立以降もコンゴの政情は不安定。そのためコバルトはつねに、コンゴ国内で紛争が起きると供給量が減り、国際相場が高騰しかねないという不安材料を抱えている。
ここ数年は、リチウムイオン電池の生産増加などを受けて、世界的にコバルトの需要は毎年約10%拡大。さらに、中国における需要が大幅に高まり、コバルトの国際価格水準は上昇を続けている。日本は、アメリカについで世界第2位のコバルト消費国。コバルトを取り巻く世界情勢は、日本の産業界にも大きな影響を与えているのである。
日本は世界で1、2位を争う金属消費国。しかも、金属資源のほとんどは、海外からの輸入に頼っている。そのため、産地の政情不安や鉱山でのストライキなどによって輸入が激減したり、ストップしてしまったりすれば、多くの産業で生産が低下。それが消費材の価格高騰といった形で国民生活に影響を与える危険性が高い。とくに、地球上にもともと存在している量が少なく、しかも経済的・技術的に純粋な形で取り出すのが難しい金属「レアメタル(希少金属)」の場合、その影響は計り知れない。顔料や合金、磁石などに使われているコバルトもまた、このレアメタルのひとつに数えられている希少な金属なのである。
産業活動を停滞させるような不測の事態に備え、日本政府は1983年からレアメタルの備蓄を開始。現在、コバルト、ニッケル、クロムなど7種類のレアメタルを国内基準消費量の合計60日分を目標にストックしている。同時に、国の内外で新たな鉱床探しを推進しているが、海底や未開発地域での探索・発掘には困難をともなう。しかも経済的な効率も決してよいとはいいがたい。そこで最近、レアメタルを確保する効果的な方法として、積極的に行われているのがリサイクル。コバルトの場合は、製品生産時に生じる廃棄物、寿命となって廃棄される製品本体などから、コバルト合金を取り出してリサイクル・リユースするシステムが構築されている。いまや、使用済みのコバルトは、もうひとつの鉱脈。リサイクルはいわば、都会の中にコバルトの新たな鉱脈をみつけ出し、発掘する作業といえるだろう。